「半正定値行列が対称行列である」ことの意味

複素数まで拡張しても使用できる定義

\boldsymbol z^{*}M \boldsymbol z \geq 0


この定義なら,Mはエルミート行列であることが保証される.Mの要素がすべて実数のときは,当然Mは実対称行列であることが保証されることになる.
証明


M=A+iB \\
A=\frac{(M+M^{*})}{2}\\
B=\frac{(M-M^{*})}{2i}


と定義する.ここで,A,BM,M^{*}に注目するとエルミートだとわかることに注意する.
\boldsymbol z^{*}M \boldsymbol z = \boldsymbol z^{*} A \boldsymbol z + i \boldsymbol z^{*} B \boldsymbol z
ここで行列Xがエルミートのとき任意の複素ベクトル\boldsymbol zにたいして,\boldsymbol z^{*}X\boldsymbol zの値は実数になるから,\boldsymbol z^{*} B \boldsymbol z=0であることがわかる.
さらに,M=Aであることも導かれる.よってMはエルミートである.

対称行列でない半正定値行列が存在する??

\boldsymbol x\in\mathbb{R},\boldsymbol x^{T}M \boldsymbol x \geq 0と実数に限定した定義をすると,対称行列でない半正定値行列が存在することになる.

参考

ja.wikipedia.org